【ハラール知識】豚由来のゼラチンは変質したことで「豚性」が消滅しているという話
こんにちは!
クウェートのよしくんです。
今回は日本に住むムスリムは豚由来のゼラチンを食べていいのかどうかを説明します。
よく日本でも「ゼラチンは豚由来のものもあるからチェックしないとダメ」みたいな話を聞くことがありますが、実はイスラーム法学説においては食べてOKとされることがあります。
今回はその説について紹介します!
お願い・本サイトはムスリムの方や飲食店の方が役立つようなムスリムの食事規定について紹介するサイトです。
・もし記事内の記述に誤りがありましたらぜひご指導ください。
・ムスリムの方や飲食店の方が役立つようなファトワーをご存知でしたら教えていただけると助かります。
イスティハーラ(変質)という考え
今回の豚由来のゼラチンが許容される考えはイスティハーラ(変質)という言葉で説明されます。
イスティハーラ(変質)とは物の形質や性質が変化すること。イスティハーラによって、その物質の概念が取り換えられると考えられている。例えば、ブドウ自体は全く問題なく食べたりジュースにして飲むことができるが、発酵させてお酒となった場合は禁止扱いになる。
今回はこの考えについて、ユースフ・アルカラダーウィー師の『ムスリム・マイノリティ法学』を参照のもとお伝えします。
ユースフ・アルカラダーウィー師とは
1926年にエジプトで生まれたイスラーム学者にして、現代で最も大きな影響力をもつウラマー(イスラーム法学者)の一人。アズハル大学で博士号取得。学生時代からムスリム同胞団の一員として慈善活動等の草の根運動も行う。また、カタール大学にシャリーア・イスラーム学部も設立し、学部長も務める。現国際イスラーム学者連盟会長。
原料によって法判断を下さない:不浄物は変質すればその規定も変わる
ユースフ・アルカラダーウィー師は、豚由来の酵素に関する食規定に関する質問を受けて「原料によって法判断を下さない」ということを述べています。
例えば、犬にしろ豚にしろ塩田で死んだとして、塩によって完全に浸食された場合、それは「塩性」だけが残っていると判断します。
同様に、葡萄に関しても同じことが言えて、
〇:葡萄
×:酔わせる酒 ←葡萄が発酵
〇:酢 ←変化
となるとのこと。
ゼラチンは「不浄とは看做されず、禁じられた豚肉とは看做されない」
この考えのもと、豚由来のゼラチンに関して、
と述べています。
また、豚に由来する石鹸、歯磨き粉も同様とのこと。
これを踏まえると明確に「豚性」を残していない限りは許容されることになりますね。
イブン・タイミーヤ等の古典イスラーム法学の大学者の学説に基づく
このユースフ・アルカラダーウィー師の件に関して、日本を代表するイスラーム法学者である中田考先生は「イブン・タイミーヤ(1328年没)などの古典イスラーム法学の大学者の学説に基づいています。」と述べています。
イブン・タイミーヤとは13世紀後半~14世紀前半にわたってシリアやエジプトで活動したイスラーム法学者。当時、法学上の独自見解は打ち出せなくなったという風潮の中、イジュティハード(独自の判断)やキヤース(演繹的類推)を行使すること、マスラハ(共同体全体の利益)を考慮することの重要性を説き、イスラーム法学を再構築することを試みる。クルアーンやスンナを直接典拠として解釈することで知られており、そのサラフィー的な(原初的な)思想や方法論は、現在のサウジアラビアの思想の礎となるワッハーブ派へと繋がっている。また、当時はモンゴル(タタール)軍がエジプトやシリアに進出してきている状況で、シャリーア(イスラーム法)に逸脱した統治を行う為政者(当時イル・ハーン国)に対してジハードが義務となるファトワー(法勧告)も出している。代表著作である『シャリーアによる統治』はマーワルディーの『統治の諸規則』に次ぐ法学的典拠ともなっている。
今回の法学的見解の出典
今回のユースフ・アルカラダーウィー師の法学的見解の出典は、日本サウディアラビア協会出版『マイノリティ・ムスリムのイスラーム法学』内に収録されている、邦訳『ムスリム・マイノリティ法学』ユースフ・アルカラダーウィー著になります。
さらに詳しく知りたい方はそちらを参照することをお勧めします。
ぜひご参考にしてくださいね!
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません