【ハラール知識】中世中東ではコーヒーがハラールか否かで揉めたことがあるよって話

ハラールの知識と知恵

こんにちは!

クウェートのよしくんです。

 

今回はちょっとした小話です!

かつてはコーヒーもハラールか問題になったことがあるよって話です!

 

今となっては全く問題ないコーヒーですが、16世紀の中世中東の時はコーヒーの大普及とともに、それがハラールではないのではないかという議論が出ることがありました。

そこからどのようにしてコーヒーが全く問題ないものとして認知されたのかを見ていきます。

お願い・本サイトはムスリムの方や飲食店の方が役立つようなムスリムの食事規定について紹介するサイトです。

・もし記事内の記述に誤りがありましたらぜひご指導ください。

・ムスリムの方や飲食店の方が役立つようなファトワーをご存知でしたら教えていただけると助かります。

 

それでは確認していきましょう!

 

コーヒーが問題となった理由は、コーヒーそのもの、 もしくはコーヒーハウス

そのコーヒー規制が行われそうになった(一時期行われた)理由としましては2種類あります。

コーヒー問題の争点1.コーヒーは人を酔わせる作用や、身体に害があるのではないか。

2.コーヒーハウスを通じて犯罪行為が放蕩者、政治的行為が見受けられる。

今回は、飲食に関係する1のほうを紹介します。

人を酔わせる作用や、身体に害があるのではないかという問題が取り上げられたことについてですね!

 

まずはどんな風にしてコーヒーが反発を受けたかについて確認しましょう。

1511年:ハーイル・ベグのメッカ事件

有名な話だと、マムルーク朝の代官にしてムフタスィブ(イスラーム法の諸規定の市場監督官)の地位にあったハーイル・ベグの話があります。

ハーイル・ベグは各法学派のウラマー(イスラーム法学者)を集めたうえで、コーヒーを審議にかけました。

 

その時の各法学派は、「本来的許容性の原則」からとりわけ身体に有害であるもの以外は基本許されているという立場をとっています。

本来的許容性の原則(イバーハ・アルアスリーヤ)とは神が望まない行為に関しては明確な指示があったはずだと考え、明確に禁止されていない物や事柄については基本的に許容されるという原則

「本来的許容性の原則」についてはこちらの記事でも書きました。

 

この「本来的許容性の原則」を引き合いにし、「身体に有害でない限り」という特徴に着目して禁止へと話を持ち込んでいます。

ハーイル・ベグはこの時に二人のペルシア人医師を呼び、コーヒーの有害性を述べさせて身体に有害であるとし、「本来的許容性の原則」の適用外として法学者たちを納得させました。

 

そしてこの決定をもって、ハーイル・ベグはメッカでコーヒーの焼却や、飲用や販売した者へのむち打ち刑を執行したようです。

 

中央:引用そのものは禁止せず

この後、ハーイル・ベグはカイロの中央に今回の件の議事録、ファトワーを請求する文書を提出したようですが、結局「コーヒーを飲むための集まりには賛成しかねる」止まりだったよう。

コーヒーの引用そのものは禁止されなかったようですね。

 

1544年:オスマン帝国の勅令による禁止

その他にも、巡礼期間中、ダマスクスからのキャラバンがオスマン帝国スルタンからのコーヒーの飲用・販売の禁止の勅令を運んできたことがあったようです。

しかしながら、1日のみ守られたのち、販売再開、飲用されていたようですね。

 

1532-33年:カイロのシャーフィイー学派スンバーティ―のコーヒー禁止ファトワー

アズハルではコーヒーのファトワーをめぐって暴力事件もあったようです。

シャーフィイー学派の学者にしてアズハルの説教師であったスンバーティ―は、以下の質問を受けました。

「カフワという飲み物についてのお考えをお聞かせください。人々が集まってカフワを飲み、実際にさまざまな弊害が発生しているのにもかかわらず、公認するように求めています。認めてよいものでしょうか、禁止すべきでしょうか」
※カフワは当時のコーヒーの呼称。現在でもアラビア語ではコーヒーを「カフワ」と言う。

これに対し、スンバーティ―は禁止するよう答え、長文の回答を書いたようです。

このコーヒー論は有名となり、コーヒーの是非についてスンバーティ―の意見を模倣するウラマーも多かったようです。

コーヒー反対派の市民の中にはこのファトワーを受けてコーヒーハウスを襲撃する暴力事件も起こした人もいたようですね。

 

カイロのハナフィー派の裁判官:コーヒーの飲用は法に触れない

この暴力事件について、コーヒー支持者はカイロのハナフィー学派の裁判官ムヒー・アッディーン・ムハンマド・イブン・イルヤースに提出しました。

彼は会議の場でコーヒーを提供して酩酊作用が見られるかどうか確認し、カイロのウラマーたちに助言を求めたようです。

そして最終的には、コーヒーの飲用は法に触れないとの判断を下したそうです。

 

イスラーム法のポイント法見解の優劣で言えば、上の地位の見解が優先されます。

今回の場合、スンバーティ―よりも上位からコーヒーの飲用は法に触れないという見解が出たため、そちらが優先されてスンバーティ―の地位は陥落したのだとか。

 

コーヒー禁止は「イジュマー」によって反論される

前述のように「コーヒーは有害である!」という意見しばしば出てきたのですが、結果的にそれらは潰れたんですね。

そして何よりも、イスラーム世界で広く一般的にコーヒーが飲まれていたことがこのコーヒー有害論の反論材料になるんですね。

ある地域のウラマー(イスラーム法学者)全体が合意すれば、イジュマー、すなわち共同体の合意が成立していたと考えられるからです。

イジュマー(合意)とはイスラーム法第3の法源で、イスラーム教徒全体の合意によって法となされること。実際には代表的ウラマーの合意を指す。これは、ハディース「わが民はけっして誤りに一致することはないであろう」に基づき、共同体として誤りに合意することは不可能という考えから成立している。

コーヒーに酩酊作用がないことは明らかですので、本来的許容性の原則ももちろん当てはまりますよね。

 

こうして、コーヒー禁止論争はなくなり、中東で今でも愛される飲み物となっています。

コーヒー以外のものでも同様に、「本来的許容性の原則」、そして「イジュマー」によってOKとみなせるもの、OKとされているものも多いような気がしますね。

 

ぜひご参考にしてくださいね!